親名義の不動産を売却する方法|委任状と成年後見制度の手続き親名義の不動産を売却する方法|委任状と成年後見制度の手続き
1. 親名義の不動産を売却するケースとは
2. 親が健在で判断能力がある場合の売却方法
2-1. 委任状を使った代理売却
2-2. 必要な書類と手続きの流れ
3. 親の判断能力が低下している場合の対処法
3-1. 成年後見制度の活用
3-2. 家庭裁判所の許可が必要なケース
4. 相続後に売却する場合の手続き
4-1. 相続登記の必要性
4-2. 相続人が複数いる場合の注意点
5. 親名義の不動産売却時の税金と特例
6. トラブルを避けるための注意点
7. まとめ
親名義の不動産を売却する方法は、親の状況によって異なります。親が健在で判断能力がある場合は、委任状を作成して子どもが代理人として売却手続きを進めることができます。この場合、親の本人確認と意思確認が必要で、実印が押された委任状と印鑑証明書を準備します。親の判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用し、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります。後見人が不動産を売却する際は、家庭裁判所の許可が必要になるケースもあります。親が亡くなった後に売却する場合は、まず相続登記を完了させて名義を相続人に変更しなければなりません。相続から3年以内の売却であれば3,000万円の特別控除が適用できる可能性があるため、早めの売却が税制面で有利です。いずれの場合も専門家に相談しながら進めることで、法的に適切な手続きを踏むことができます。
1. 親名義の不動産を売却するケースとは
親名義の不動産を売却する必要が生じるケースは、主に3つのパターンがあります。一つ目は、親が高齢になり施設への入居を決めたため、住んでいた実家を売却するケースです。施設の入居費用や今後の生活費に充てるため、または空き家として管理するよりも売却した方が良いと判断した場合などです。この場合、親はまだ健在で判断能力もありますが、高齢のため売却手続きを子どもに任せたいという状況です。
二つ目は、親が認知症などで判断能力が低下してしまい、本人が売却の意思決定をできない状態になっているケースです。施設の費用が必要であったり、空き家の管理が難しくなったりして売却を検討するものの、親自身が契約行為を行えない状況です。この場合、通常の委任状による代理では売却できず、成年後見制度を利用する必要があります。
三つ目は、親が亡くなり、相続した不動産を売却するケースです。相続人が複数いる場合は遺産分割の一環として売却することもありますし、誰も住む予定がない実家を処分するために売却することもあります。このケースでは、まず相続登記を完了させて名義を相続人に変更してから、売却手続きを進めることになります。
いずれのケースでも、親名義のまま勝手に売却することはできません。必ず法的に適切な手続きを踏む必要があります。親の状況によって取るべき手続きが異なりますので、まずは親の健康状態や判断能力を確認し、どのケースに該当するかを見極めることが重要です。
2. 親が健在で判断能力がある場合の売却方法
2-1. 委任状を使った代理売却
親が健在で判断能力がある場合、最も一般的な方法は委任状を使った代理売却です。親が子どもを代理人として指名し、売却に関する一連の手続きを任せることができます。高齢で体力的に負担が大きい場合や、遠方に住んでいて頻繁に立ち会えない場合などに、この方法が選択されます。
委任状による代理売却では、親が代理人に対して「この不動産の売却に関する一切の権限を委任する」という内容の委任状を作成します。この委任状には、親の実印が押され、印鑑証明書が添付されます。不動産会社や司法書士が委任状の雛形を用意してくれることが多いので、それに従って作成すれば問題ありません。
ただし、委任状があっても、重要な局面では親本人の意思確認が求められることがあります。例えば、売買契約を結ぶ際や、決済の際には、不動産会社や司法書士が親本人に電話で確認を取ることがあります。「本当にこの価格で売却することに同意していますか」「代理人に任せることに間違いありませんか」といった確認です。これは、本人の意思に反して勝手に売却されることを防ぐための措置です。
2-2. 必要な書類と手続きの流れ
委任状を使って親名義の不動産を売却する場合、通常の売却に必要な書類に加えて、委任状と親の印鑑証明書が必要になります。また、親の本人確認書類として、運転免許証やマイナンバーカードのコピーも求められることがあります。さらに、親と代理人の関係を証明するため、戸籍謄本の提出を求められることもあります。
手続きの流れとしては、まず不動産会社に売却の相談をし、査定を受けます。この段階で、親名義の不動産であることと、委任状を使って代理で売却したいことを伝えましょう。不動産会社は必要な書類や手続きについてアドバイスしてくれます。査定額に納得できたら、媒介契約を結びますが、この契約書にも委任状が必要になります。
購入希望者が見つかったら、売買契約を結びます。契約書への署名は代理人が行いますが、契約書には「売主〇〇〇〇 代理人△△△△」という形で記載されます。決済の際も代理人が立ち会いますが、前述のように親本人への意思確認が行われることがあります。決済が完了すれば、所有権が買主に移転し、売却代金が親の口座に振り込まれます。
親が高齢で体力的に負担が大きい場合でも、最低限の意思確認には対応できる状態であることが前提です。もし親が病気で寝たきりの状態であったり、会話がほとんどできない状態であったりする場合は、委任状による代理売却は難しく、成年後見制度の利用を検討する必要があります。

3. 親の判断能力が低下している場合の対処法
3-1. 成年後見制度の活用
親が認知症などで判断能力が低下している場合、委任状を使った代理売却はできません。なぜなら、委任状を作成する行為自体が法律行為であり、判断能力が必要だからです。判断能力がない状態で作成された委任状は無効とされる可能性があります。このような場合は、成年後見制度を利用する必要があります。
成年後見制度とは、判断能力が不十分な方を保護するための制度です。家庭裁判所に申し立てを行い、成年後見人を選任してもらいます。後見人は、本人に代わって財産管理や契約行為を行う権限を持ちます。後見人には、親族がなることもあれば、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることもあります。
成年後見人の申立てには、医師の診断書が必要です。親の判断能力がどの程度低下しているかを医学的に証明する必要があります。また、申立書や本人の財産目録、親族関係図なども提出します。申立てから後見人が選任されるまでには、通常2ヶ月から4ヶ月程度かかります。急いで売却したい場合でも、この期間は必要になりますので、早めに手続きを始めることが重要です。
3-2. 家庭裁判所の許可が必要なケース
成年後見人が選任された後、不動産を売却する際には注意が必要です。後見人は本人の財産を守る立場にあるため、不動産のような重要な財産を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要になることがあります。特に、本人が現在住んでいる不動産を売却する場合は、必ず家庭裁判所の許可を得なければなりません。
家庭裁判所の許可を得るためには、なぜ売却が必要なのか、その理由を説明する必要があります。例えば、「施設の入居費用が必要である」「空き家として管理するのが困難である」「修繕費用が高額で維持できない」といった合理的な理由が求められます。また、売却価格が適正であることも重要で、査定書などを提出して、不当に安い価格で売却するものではないことを証明します。
家庭裁判所の許可申請から許可が下りるまでには、1ヶ月から2ヶ月程度かかります。許可が下りてから実際の売却活動を開始できますので、全体としてかなりの時間がかかることを覚悟する必要があります。ただし、本人が住んでいない不動産で、売却が本人の利益になることが明らかな場合は、裁判所の許可なく売却できることもあります。個々のケースによって異なりますので、後見人を選任する際に、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
4. 相続後に売却する場合の手続き
4-1. 相続登記の必要性
親が亡くなった後、親名義の不動産を売却する場合は、まず相続登記を完了させる必要があります。相続登記とは、不動産の名義を亡くなった親から相続人に変更する手続きです。親名義のまま売却することはできませんので、必ずこの手続きを踏まなければなりません。
相続登記には、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などの書類が必要になります。相続人が誰かを確定するため、親の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。相続人が複数いる場合は、誰が不動産を相続するのかを決める遺産分割協議を行い、協議書を作成します。協議書には相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
相続登記の手続きは自分で行うこともできますが、書類の準備や法務局での手続きが複雑なため、司法書士に依頼することが一般的です。司法書士に依頼した場合の費用は、物件の価格にもよりますが、5万円から15万円程度が相場です。相続登記が完了すれば、不動産の名義が相続人に変わり、その後は通常の売却手続きを進めることができます。
4-2. 相続人が複数いる場合の注意点
相続人が複数いる場合、不動産の売却には全員の同意が必要です。例えば、兄弟3人が相続人の場合、誰か一人が勝手に売却することはできません。全員で話し合って売却を決定し、売却代金をどのように分配するかも事前に決めておく必要があります。
一般的な方法は、代表者一人の名義に相続登記をしてから売却し、売却代金を相続人で分配する方法です。この場合、遺産分割協議書に「不動産は長男が相続し、売却後に代金を兄弟で均等に分配する」といった内容を記載します。または、相続人全員の共有名義にしてから売却する方法もありますが、この場合は売買契約書に全員が署名する必要があり、手続きが煩雑になります。
相続人間で意見が分かれると、売却が進まなくなってしまいます。「売却したい」という人と「売却したくない」という人がいる場合、全員の合意を得るのが難しくなります。こうした場合は、弁護士などの専門家を交えて話し合うことをおすすめします。また、相続が発生する前に、親が元気なうちに財産の扱いについて話し合っておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
5. 親名義の不動産売却時の税金と特例
親名義の不動産を売却した場合、譲渡所得税が課税される可能性があります。譲渡所得税は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた利益に対して課税されます。親が生前に売却した場合は親に、相続後に売却した場合は相続人に課税されます。
親が生前に自分の居住していた不動産を売却する場合、居住用財産の3,000万円特別控除が適用できる可能性があります。この特例を使えば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できるため、多くの場合は税金がかからなくなります。ただし、この特例を受けるには確定申告が必要です。
相続した不動産を売却する場合も、相続から3年を経過する年の12月31日までに売却すれば、被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除が適用できる可能性があります。この特例を使うためには、いくつかの要件がありますが、該当すれば大きな節税効果が得られます。相続した不動産を売却する場合は、できるだけ3年以内に売却することをおすすめします。
また、所有期間が10年を超える居住用財産を売却する場合は、軽減税率の特例も併用できます。税金に関する特例は複雑で、個々の状況によって適用される制度が異なりますので、売却を検討する際には、税理士や不動産会社に相談することをおすすめします。適切な税務申告を行うことで、税負担を最小限に抑えることができます。
6. トラブルを避けるための注意点
親名義の不動産を売却する際には、いくつかのトラブルが発生しやすいポイントがあります。まず、親の意思確認を十分に行うことが重要です。子どもが勝手に売却を進めてしまうと、後で親から「そんなつもりではなかった」と言われたり、他の兄弟から「勝手に売却した」と非難されたりすることがあります。売却を決める前に、親の意思を明確に確認し、できれば他の家族にも相談しておくことが大切です。
委任状を使った代理売却の場合、委任状の内容が不十分だとトラブルになることがあります。委任状には、売却する不動産の地番や家屋番号を正確に記載し、代理人の権限の範囲を明確にしておく必要があります。不動産会社や司法書士に委任状の雛形を作成してもらい、不備がないようにしましょう。
成年後見制度を利用する場合は、後見人が選任されるまでに時間がかかることを理解しておく必要があります。急いで売却したくても、手続きには数ヶ月かかりますので、余裕を持って準備を始めましょう。また、後見人が選任された後も、家庭裁判所の監督を受けるため、勝手に売却を進めることはできません。適切な手続きを踏む必要があります。
相続後に売却する場合は、相続人間でのトラブルに注意が必要です。売却価格や代金の分配方法について、事前にしっかりと話し合い、合意を文書に残しておくことが重要です。また、相続登記を放置すると、時間が経つにつれて相続人が増えて手続きが複雑になることがあります。相続が発生したら、できるだけ早く相続登記を完了させることをおすすめします。

7. まとめ
親名義の不動産を売却する方法は、親の状況によって大きく異なります。親が健在で判断能力がある場合は、委任状を使って子どもが代理人として売却手続きを進めることができます。親の判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用し、家庭裁判所で後見人を選任してもらう必要があります。親が亡くなった後に売却する場合は、まず相続登記を完了させてから売却手続きを進めます。
いずれの場合も、法的に適切な手続きを踏むことが重要です。勝手に売却を進めてしまうと、後でトラブルになる可能性があります。不動産会社、司法書士、税理士などの専門家に相談しながら、慎重に進めることをおすすめします。特に、税制上の特例を活用することで、税負担を大きく軽減できる可能性がありますので、早めに専門家に相談しましょう。
親の不動産を売却する際は、親の意思を尊重し、家族間でよく話し合うことが大切です。感情的にならず、冷静に判断することで、円満に売却を進めることができます。また、売却のタイミングも重要で、特に相続した不動産は3年以内に売却することで税制優遇を受けられますので、計画的に進めることが重要です。
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