相続した不動産の取得費がわからない|税金と資料の探し方【相続不動産の売却ならセンチュリー21クレール不動産】
-
相続した不動産の取得費がわからない|税金と資料の探し方
更新日:2026-10-10 公開日:2026-10-10
結論
相続した不動産の取得費は、原則として亡くなった方の購入代金や購入時の費用を基に計算し、建物は減価償却を反映します。取得費が不明な場合などは売却代金の5%を概算取得費にできますが、まず契約書の写しや領収書など、実際の金額を確認できる資料を探してください。税理士・税務署へ計算方法を確認し、売却価格・費用・税金を合わせて手取りを見積もることが大切です。

この記事は、相続した家や土地を売却する予定で「親の購入契約書が見つからない」「購入価格を誰も覚えていない」「税金を差し引くといくら残るか知りたい」という方に向けたものです。被相続人とは、亡くなった方を指します。売る・残す・貸すの判断や、登記から売却までの全体像は、相続した家・空き家の売却ガイドをご確認ください。本記事では、取得費の資料と譲渡所得の計算に絞って説明します。
取得費は、原則として亡くなった方の購入代金等を引き継ぐ
相続した家や土地を売る場合、取得費の出発点は、原則として亡くなった方が取得したときの購入代金等です。相続した時点の査定価格や相続税評価額に置き換わるわけではありません。購入・建築の金額と、土地・建物それぞれの取得時期を確認します。
譲渡所得の基本
売却収入 − 取得費 − 譲渡費用 = 譲渡所得取得費とは、不動産を取得するためにかかった購入代金・建築代金・購入時の仲介手数料等を基にした金額です。建物では、その後の経過に応じた減価償却費相当額などを差し引きます。適用できる特例がある場合は、取得費加算や特別控除を別に反映します。
相続税評価額・固定資産税評価額・査定価格との違い
- 取得費:売却時の譲渡所得を計算するための、過去の取得に基づく金額です。
- 相続税評価額:相続税の計算で使う評価額です。
- 固定資産税評価額:固定資産税等の計算の基礎となる評価額です。
- 査定価格:現在の市場や物件条件を踏まえた、売却価格の見込みです。
相続税の申告書に不動産の評価額が載っていても、その金額をそのまま購入代金として使うことはできません。相続人が購入代金を支払っていないことだけを理由に、取得費がゼロになるわけでもありません。
根拠:国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」。
購入契約書がない場合は、支払資料と取引の記録を探す
契約書の原本が見つからない場合も、写し・領収書・建築工事の資料などが残っていないか確認します。書類の種類だけで判断せず、対象の不動産、取引相手、日付、支払額を照合してください。以下は資料探しの手順であり、各資料が税務上の証拠として十分かどうかは税理士・税務署への確認が必要です。
- 家族が保管する紙・データを確認する
実家の書類箱、家族が預かる封筒、貸金庫、スキャンデータ、過去のメール等を確認します。売買契約書だけでなく、領収書、決済時の精算書、工事請負契約書も探します。片付けの際は、不動産や税務に関係する資料をまとめて残してください。
- 不動産と取得時期を特定する
登記事項証明書等で土地・建物、過去の所有者、取得の経緯を調べます。土地の購入と建物の建築が別の年なら、それぞれの資料が必要です。登記の情報だけで購入価格が分かるとは限りません。
- 取引に関係した会社へ資料の有無を問い合わせる
購入時の仲介会社、売主の会社、建築会社、金融機関等が分かれば、保管資料や写しの提供が可能か問い合わせます。資料の保存状況、相続関係や本人確認の手続きにより、取得できない場合もあります。
- 見つかった資料を税理士・税務署へ提示する
日付順に並べ、どの不動産の何の支払かを整理します。金額が不明な部分と確認できた部分を分け、土地・建物の内訳、建物の減価償却、実額計算の可否を確認します。
表は横にスクロールして確認できます。
取得費の確認に向けて探す資料 資料 確認する内容 注意点 売買契約書・決済精算書・領収書 購入代金、売主、支払額、土地・建物の内訳 契約の対象と売却する物件が同じか、追加精算がないかを照合 工事請負契約書・工事代金の領収書 建築代金、工事内容、追加工事、完成時期 建物本体、設備、後年の改良などを分けて整理 購入時の費用・改良工事の資料 仲介手数料、登記費用、設備費・改良費等の内容 取得費に含められる範囲、経費との重複を確認 通帳・振込記録・借入関係の資料 支払日、支払先、資金の流れ 借入額や返済総額を、そのまま購入代金とは扱わない 登記記録・過去の申告資料 所有者、取得の経緯、賃貸していた建物の減価償却等 登記記録だけでは実際の購入代金を確認できない場合がある 金額を推測して申告しない
家族の記憶、抵当権の設定額、当時の相場や現在の査定価格だけで取得費を確定しないでください。契約書以外の資料や推計を使えるかどうかも、資料と算定根拠を示して税理士・税務署へ確認します。
取得費が不明な場合などは、売却代金の5%を使える
先祖から引き継いだ土地などで取得費が分からない場合は、売却代金の5%を概算取得費として計算できます。実際の取得費が売却代金の5%より少ない場合も、5%を使える取扱いがあります。「税率が5%」という意味ではありません。
概算取得費 = 売却代金 × 5%
試算例:売却代金4,000万円 × 5% = 200万円概算取得費が少ないほど、他の条件が同じなら譲渡所得は大きくなります。購入資料を確認できる見込みがある場合は、実額で計算した取得費と5%の金額を比べてから税務上の扱いを確認しましょう。
5%に通常の取得費用を重ねて加えない
概算取得費を使う場合、相続人が支払った通常の登記費用等を、5%にさらに上乗せすることはできません。一方、売却のために直接かかった譲渡費用は別の項目です。相続税の取得費加算は、通常の費用の上乗せとは別の特例として、要件を確認します。
根拠:国税庁「取得費が分からないとき」および相続時の登記費用等に関する説明。
建物は減価償却を反映し、土地・建物の内訳を確認する
建物の取得費は、購入・建築にかかった金額をそのまま使うのではなく、減価償却費相当額などを差し引いて求めます。計算は建物の構造、経過年数、賃貸等の利用状況によって変わります。相続してからの期間だけで計算せず、亡くなった方の取得時からの経緯を整理してください。
非業務用の建物を計算する例
事業や賃貸に使われていなかった建物では、構造に応じた償却率と経過年数を使います。減価償却費相当額は建物の取得価額の95%が限度で、経過年数は6か月以上の端数を1年、6か月未満を切り捨てて扱います。
非業務用建物の減価償却費相当額
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数試算例:木造・非業務用・経過年数30年
建物の取得価額2,000万円、償却率0.031、経過年数30年(端数なし)と仮定すると、減価償却費相当額は1,674万円、差引後の建物取得費は326万円です。土地の取得費、その他の費用、増改築等は含めない説明用の計算です。
賃貸住宅など業務用の建物は、各年の減価償却費の累計等を確認します。途中で住居から賃貸へ変えた場合や、増築・建替えがある場合も、上の例にそのまま当てはめないでください。
購入総額は分かるが、土地・建物の内訳が分からない場合
総額が確認できても、土地と建物を分けないと建物の減価償却を計算できません。契約書の内訳、建築工事の資料、当時の評価資料等を集め、どの根拠で配分するかを税理士・税務署へ確認します。内訳が不明という理由だけで、不動産全体の取得費をすぐに5%と決める必要はありません。
計算方法:国税庁「建物の取得費の計算」。
税金で差し引く費用と、手取りから差し引く支出を分ける
現実に支払うお金が、すべて取得費や譲渡費用になるわけではありません。税金の計算に使う項目と、現金の手取りを計算する項目を別に整理します。費用の目的、利用状況、過去の経費処理、概算取得費の使用によって扱いが変わります。
表は横にスクロールして確認できます。
主な費用・支出の整理 項目 譲渡所得の計算での扱い 確認する点 購入代金・建築代金・購入時の仲介手数料等 実額計算での取得費の基礎 建物の減価償却、支払資料、設備費・改良費等 相続時の登記費用等 非業務用不動産の実額計算では取得費に含まれるものがある 概算取得費を使う場合は、5%に追加できない 売却時の仲介手数料・売主負担の印紙税 通常は譲渡費用 実際の負担額と領収書等 固定資産税・通常の修繕等の維持管理費 通常の維持管理費は譲渡費用にならない 手取りや保有負担の比較では支出として把握 住宅ローンの元本返済 返済そのものを取得費として追加しない 売却代金で完済する額は手取りから差し引く 代償分割で他の相続人へ支払う代償金 その相続不動産の取得費には算入しない 相続人間の資金精算と、売却時の税金を別に計算 解体費、測量費、残置物の処分費などは、支出の目的や契約条件を整理して税務上の扱いを確認してください。支払った時期だけで取得費・譲渡費用を分類せず、同じ費用を重複して差し引かないようにします。
代償分割の進め方は、相続不動産の遺産分割と代償金の考え方で確認できます。
根拠:国税庁「取得費となるもの」、「譲渡費用となるもの」、所得税基本通達38-7(代償分割)。
取得費の確認によって税金と手取りの見通しが変わる
取得費の資料を確認できると、売却後の税金・手取りをより具体的に見積もれます。税金は原則として取得費等を差し引いた利益を基に計算し、手取りは売却代金から現在支払う費用・返済・税金を差し引いて考えます。過去の購入代金を、売却時の現金支出としてもう一度差し引くものではありません。
課税譲渡所得 = 売却収入 − 取得費 − 譲渡費用 − 適用できる特別控除
概算手取り = 売却代金 − 売却に伴う支出 − ローン完済額 − 売却にかかる税金の見込み所有期間は、原則として亡くなった方の取得時から判定する
長期・短期の区分は、原則として亡くなった方の取得時期を引き継ぎ、売却した年の1月1日時点で判定します。相続してから何年たったかだけで判断しません。2026年分の一般的な税率の合計は、所有期間が5年を超える長期で20.315%、5年以下の短期で39.63%です。
税率の合計は所得税・復興特別所得税・住民税。軽減税率などの特例は別に確認します。根拠:国税庁長期譲渡所得の税額・短期譲渡所得の税額。
試算例:4,000万円で売却する場合
売却代金4,000万円、売却時の支出200万円(全額が譲渡費用に該当すると仮定)、ローン残債なし、2026年の長期譲渡、特別控除・取得費加算なしとします。資料で減価償却後の実額取得費1,500万円を確認できる場合と、取得費が不明で5%を使う場合を比較します。
表は横にスクロールして確認できます。金額は説明用の仮定です。
取得費が不明な場合と実額を確認できた場合の比較 計算項目 取得費不明・5%を使用 実額取得費を確認 売却代金 4,000万円 4,000万円 取得費 200万円 1,500万円 譲渡費用 200万円 200万円 課税譲渡所得 3,600万円 2,300万円 税額の目安(20.315%) 約731万円 約467万円 税引き後の概算手取り 約3,069万円 約3,333万円 この条件での税額差は約264万円です。実額取得費は資料と適切な計算に基づく必要があり、任意の金額を選べるわけではありません。実額が5%を下回る場合や特例を使える場合などは結果が変わります。
試算は税率を単純に乗じた目安で、所得控除の影響や申告時の端数処理等を省略しています。表示額は万円単位に丸めています。実際の税額・手取り・成約価格を保証するものではありません。
相続税の取得費加算と空き家特例は、別に要件を確認する
取得費が分からない場合も、税制特例の適用可能性は別に確認します。相続税の取得費加算は取得費へ一定額を加える制度、空き家特例は譲渡所得から一定額を控除する制度です。同じ不動産の譲渡に、この2つを重ねて適用することはできません。
相続税の取得費加算
相続または遺贈で取得した財産を売り、その取得者に相続税が課税されている場合などに、一定額を取得費に加算できる特例です。売却期間は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。相続税全額がそのまま取得費になる制度ではなく、財産ごとの計算と確定申告が必要です。
相続税の申告書、財産の評価資料、売却予定日を用意し、加算できる額と期限を税理士へ確認します。概算取得費を使う場合も、特例の適用と計算方法を別に相談してください。
根拠:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」。
相続空き家の特別控除
亡くなった方が住んでいた家と敷地等を一定の条件で売る場合に、譲渡所得から控除を受けられる制度です。家屋の建築時期、相続前後の利用、取得者、耐震性や取壊し等の条件を確認します。相続した不動産すべてが対象になるわけではありません。
売却期限は「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」と「2027年12月31日まで」の両方を満たす必要があります。適用する場合は確定申告も必要です。控除の上限・対象家屋・必要書類は、相続空き家の3,000万円特別控除の要件と売却期限で詳しく説明しています。
根拠:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」。解体・賃貸・売買契約を進める前に、取得費加算との選択も含めて税理士・税務署へ確認してください。
よくある質問
購入契約書がなければ、必ず取得費は5%になりますか?
原本がないだけで直ちに5%と決まるわけではありません。契約書の写し、領収書、工事関係の資料等を探し、実額を確認できるか税理士・税務署へ相談します。取得費が分からない場合などには、売却代金の5%を使う方法があります。
相続税評価額や査定価格を取得費にできますか?
通常の相続では、原則として亡くなった方の購入代金等を基に取得費を計算します。相続税評価額や現在の査定価格へ自動的に置き換わるものではありません。土地・建物の内訳を検討するための資料と、取得費そのものの根拠は分けて確認してください。
土地の購入価格だけ分かる場合はどうすればよいですか?
土地と建物の資料を分けて整理し、建築代金や購入総額、建物の利用履歴を確認します。分かる部分と不明な部分を税理士・税務署へ示し、内訳や計算方法を確認してください。不動産全体を一律に5%とするかどうかを、資料確認前に決めないことが大切です。
空き家特例で税金がゼロになる場合も申告が必要ですか?
相続空き家の特別控除を受けるには、控除後の譲渡所得がゼロでも確定申告が必要です。市区町村の確認書等、適用に必要な書類を売却前から確認してください。取得費加算を使う場合も、所定の書類を添えた確定申告が必要です。
取得費が分からないままでも査定を依頼できますか?
現在の売却価格を調べる査定は、取得費の資料収集と並行して進められます。ただし、査定価格だけでは税金や手取りは確定しません。不動産会社で売却価格・費用を整理し、税理士・税務署で取得費・特例・税額を確認します。
相談前に、確認できた金額と不足資料を分けておく
最初の相談では、書類をすべてそろえることより、どの物件の何が分かっているかを整理することが役立ちます。取得費が不明な部分、売却予定、名義・持分、借入を分けてメモしてください。不足資料は、確認先と取り寄せの可否を相談します。
相談前メモ
- 所在地、土地・建物・私道等の登記名義、相続人や持分
- 亡くなった方の購入・建築時期と、確認できた購入代金等
- 契約書・領収書等の有無、問い合わせた会社、未確認の資料
- 土地・建物の内訳、増改築、賃貸・事業利用の履歴
- 相続開始日、相続税の課税・申告状況、売却希望時期
- 売却費用、ローン残高、代償金等の支払予定
売却価格・方法・契約条件は不動産会社、取得費・税額・申告は税理士・税務署、相続登記は司法書士・法務局、遺産分割の争いは弁護士へ確認します。
取得費の確認と並行して、売却価格・費用の見通しを整理できます
センチュリー21 クレール不動産は、全国の相続不動産相談・査定に対応しています。名義、物件状況、売却希望時期を伺い、売却・保有・活用の判断材料を整理します。税務や登記の確認が先に必要な場合は、確認事項を整理したうえで専門家への相談をご案内します。
電話受付:10:00~19:00/水曜定休。査定価格は成約価格や手取り額を保証するものではありません。
出典・適用時点
税制の説明は、国税庁の「令和8年4月1日現在法令等」として掲載された各資料および所得税基本通達を基にしています。税率と税額の試算は2026年分を対象とし、資料探しの手順・相談前メモは売却準備のための整理です。
- 国税庁No.3270 相続した土地・建物の取得費と取得時期
- 国税庁No.3258 取得費が分からないとき
- 国税庁No.3261 建物の取得費の計算
- 国税庁No.3252 取得費となるもの・No.3255 譲渡費用となるもの
- 国税庁No.3208 長期譲渡所得・No.3211 短期譲渡所得の税額計算
- 国税庁No.3267 相続税の取得費加算
- 国税庁No.3306 相続空き家の特別控除
- 国税庁所得税基本通達・法第38条関係(38-7等)
本記事は一般的な情報です。限定承認、過去の買換え・交換の特例、複数世代の相続、業務利用、共有持分等が関係する場合は計算が変わることがあります。個別の取得費・税額・特例・申告方法は、物件資料と相続関係を基に税理士・税務署へ確認してください。























