成年後見と不動産売却|家庭裁判所の許可・手続き・費用をわかりやすく解説

成年後見制度を利用した不動産売却では、親の認知症が進んで施設への入居が必要になった場面や、判断能力の低下した家族が所有する不動産を整理したい場面で検討されます。
ただし、成年後見が関係する売却は、通常の不動産売却とは進め方が異なります。とくに、本人の居住用不動産を売却する場合は、一般的に家庭裁判所の許可が必要とされ、許可前に契約を進めると無効となるおそれがあります。
この記事では、成年後見制度の基本、不動産売却の流れ、家庭裁判所の許可、費用、税金、よくあるトラブルまで、初めて確認する方にもわかりやすいよう整理します。
この記事のポイント(要点まとめ)
- 居住用不動産の売却は、一般的に家庭裁判所の許可が必要です。許可前に契約を進めないよう注意が必要です。
- 成年後見開始の申立てから売却完了までは、数か月から半年超かかるケースもあります。早めの準備が重要です。
- 売却益が出た場合は、譲渡所得税や住民税の申告が必要となることがあります。税理士などの専門家確認が安心です。
※本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務判断を行うものではありません。実際の手続きや税務処理は、家庭裁判所、司法書士、弁護士、税理士などへご確認ください。
目次
成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を、法律面と財産管理の面から保護・支援する制度です。本人に代わって契約や財産管理を行う支援者が選ばれ、本人の利益を守ることが目的とされています。
不動産の売却は重要な財産処分にあたるため、本人が契約内容を十分に理解して判断することが難しい場合は、成年後見制度の利用が検討されます。
制度の基本は、法務省の成年後見制度・成年後見登記制度 Q&Aや、法務省の後見登記関係手続でも確認できます。
後見・保佐・補助の3類型
法定後見には、本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3類型があります。不動産売却に関係する場面では、それぞれの類型ごとに支援できる範囲が異なるため、まずは違いを整理しておくことが大切です。
- 判断能力の目安
- 常に判断能力が欠けている状態
- 支援者
- 成年後見人
- 主な権限
- 財産管理全般の代理権、一定の法律行為の取消権など
- 不動産売却時の見方
- 売却手続きに関与するケースが多い
- 判断能力の目安
- 判断能力が著しく不十分な状態
- 支援者
- 保佐人
- 主な権限
- 重要行為への同意権、取消権、一部代理権など
- 不動産売却時の見方
- 付与された代理権の範囲確認が必要
- 判断能力の目安
- 判断能力が不十分な状態
- 支援者
- 補助人
- 主な権限
- 特定行為への同意権や一部代理権など
- 不動産売却時の見方
- 付与された代理権の範囲確認が必要
実際にどこまで対応できるかは、審判内容や登記事項証明書の確認が必要です。相続で取得した不動産が含まれる場合は、相続・空き家の売却で損しないための完全ガイド|手続きと節税対策も参考になります。
法定後見と任意後見の違い
法定後見
法定後見は、すでに本人の判断能力が低下している場合に、家庭裁判所へ申立てを行って開始する制度です。家庭裁判所が後見人等を選任し、本人の利益を踏まえて財産管理や法律行為を支援します。
任意後見
任意後見は、本人がまだ十分な判断能力を有しているうちに、将来に備えて信頼できる人と任意後見契約を結ぶ制度です。ただし、契約を結ぶだけで直ちに効力が生じるわけではなく、一般的には家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから効力が生じます。
| 開始のタイミング | 法定後見は判断能力低下後に申立て、任意後見は判断能力があるうちに契約します。 |
|---|---|
| 支援者の選任 | 法定後見は家庭裁判所が選任し、任意後見は本人があらかじめ候補者を決めます。 |
| 不動産売却時の注意点 | 居住用不動産の売却では、一般的に家庭裁判所の許可が問題となるため、事前確認が大切です。 |
成年後見人が不動産を売却できるケース
居住用不動産の場合
本人が現在住んでいる、または以前住んでいた自宅などの居住用不動産を売却する場合は、一般的に家庭裁判所の許可が必要と考えられます。長期入院中や施設入所中でも、生活実態や将来戻る可能性などによっては居住用と判断されることがあります。
重要な注意点
居住用不動産は、許可を得る前に売買契約を締結しないよう注意が必要です。個別事情によって扱いが変わることもあるため、家庭裁判所や専門家へ事前確認するのが一般的です。
非居住用不動産の場合
賃貸用物件、投資用マンション、相続した空き家や土地など、本人が居住していない不動産については、居住用不動産とは扱いが異なる場合があります。ただし、後見人には本人の利益を最優先に財産管理を行う義務があるため、売却の必要性、価格の妥当性、代金の使途は丁寧に整理しておくことが大切です。
相続が絡むケースでは、相続・空き家の売却で損しないための完全ガイド|手続きと節税対策、古家のまま売るか迷う場合は古家の売却方法|古家付き土地か更地かの判断基準もあわせて確認すると、手続き全体を整理しやすくなります。
施設入所費確保のため自宅売却を検討したケース
たとえば、親の認知症が進み、自宅での生活継続が難しくなったため、施設入所費や今後の生活費を確保する目的で自宅売却を検討するケースがあります。このような場合は、売却の必要性が比較的整理しやすい一方、売却対象が本人の自宅であるため、一般的には家庭裁判所の許可が重要な論点になります。
実務では、施設への入居予定時期、毎月の費用見込み、自宅を維持する負担、空き家化による管理リスクなどを整理しながら、売却理由を説明していく流れが多く見られます。査定価格の妥当性を示すために複数社へ査定を依頼し、売却後の資金使途も明確にしておくと、全体像を共有しやすくなります。
なお、施設入所をきっかけとした売却でも、「もう住んでいないから許可が不要」とは限りません。居住用かどうかの判断は個別事情によるため、家庭裁判所や専門家へ確認しながら進めることが一般的です。売却後の税金が気になる場合は、不動産売却にかかる税金の種類と計算方法をわかりやすく解説も参考になります。
家庭裁判所の許可申立ての概要
居住用不動産を売却する場合は、後見開始後に家庭裁判所へ処分許可の申立てを行う流れが一般的です。提出書類や必要資料は事案によって異なるため、管轄裁判所での確認が重要です。
| 申立人 | 成年後見人など、権限を有する支援者 |
|---|---|
| 申立先 | 本人の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 主な確認資料 | 申立書、不動産登記事項証明書、固定資産税評価証明書、査定書、売買契約書案、売却代金の使途がわかる資料など |
| 審理期間の目安 | 数週間から数か月程度となることがあります |
| 手数料の目安 | 収入印紙などが必要になることがあります |
申立書の書式や手続きの概要は、裁判所ウェブサイトの居住用不動産処分許可申立書(書式ページ)や、東京家庭裁判所の成年後見制度(後見・保佐・補助)のご案内などで確認できます。
実務では、価格の妥当性を示すために複数社の査定を比較する、売却理由と売却後の資金使途を整理する、といった準備が求められることが多いです。売却活動全体の流れを先に把握したい場合は、台東区・荒川区の不動産売却について詳しく見るも参考になります。
不動産売却の流れ
1. 成年後見開始の申立て
法定後見の場合、まず家庭裁判所へ申立てを行います。本人の判断能力の状況や書類準備の進み具合によって、開始まで一定の時間を要することがあります。
2. 後見人等の選任と登記
家庭裁判所の審判により後見人等が選任されると、成年後見登記が行われます。権限確認には、法務局の登記事項証明書が用いられるのが一般的です。
3. 不動産の現状確認と査定依頼
売却価格の妥当性を把握するため、不動産会社へ査定を依頼します。査定額に幅が出ることもあるため、複数社で比較する方法が取られることもあります。相場感や査定の考え方を先に把握したい場合は、不動産査定サイトの比較ポイントと選び方|失敗しない活用術も参考になります。
4. 家庭裁判所への処分許可申立て
居住用不動産では、査定資料や契約案などを添えて家庭裁判所へ申立てます。この段階では、一般的に契約締結前であることが前提です。
5. 売買契約の締結
必要な許可や確認が整った後、後見人等が本人の代理人として売買契約を締結します。保佐・補助・任意後見では、与えられた権限や監督人の有無をあらためて確認しておく必要があります。
6. 決済・所有権移転登記・引渡し
決済日に売却代金を受領し、所有権移転登記や引渡しを行います。登記は司法書士へ依頼することが多く、本人の財産管理資料として保管も必要です。
7. 売却代金の管理と報告
売却代金は本人の財産として適切に管理し、必要に応じて家庭裁判所への定期報告や収支説明に反映します。売却後に申告が必要か確認したい場合は、不動産売却後の確定申告完全ガイドも役立ちます。
期間の目安
成年後見開始の申立て、許可申立て、売却活動、決済までを通すと、全体で数か月から半年超かかるケースもあります。施設入所や空き家管理など期限のある事情がある場合は、早めの相談が安心です。
費用・税金について知っておくべきこと
申立てや手続きにかかる費用
成年後見の申立てや不動産売却では、収入印紙代、登記関係費用、診断書作成費、必要に応じた鑑定費用、司法書士や弁護士への依頼費用などが発生することがあります。金額は事案や地域によって異なるため、事前見積りの確認が大切です。
後見人報酬
専門職後見人が選任された場合などは、家庭裁判所が報酬を決定する運用が一般的です。財産額や業務の複雑さにより金額は変わるため、一律ではありません。
譲渡所得税・住民税
不動産売却で利益が出た場合は、本人に譲渡所得税や住民税が課されることがあります。後見人が手続きを代行しても、納税義務者はあくまで本人です。
税金の考え方は、不動産売却にかかる税金の種類と計算方法をわかりやすく解説や、不動産売却後の確定申告完全ガイドも参考になります。
特例の適用は個別確認が必要
居住用財産の3,000万円特別控除、長期所有の軽減税率、相続空き家の特例などが検討対象になることがありますが、被後見人が施設入所中である場合など、要件判断が難しいケースもあります。最終的には税理士や税務署への確認が推奨されます。
税務の一般情報は、国税庁の国税庁公式サイトでも確認できます。
注意点・よくあるトラブル
家族間で意見が分かれる
親の家を売るか残すかで、兄弟姉妹などの意見が分かれることは少なくありません。ただし、後見人が重視すべきなのは、原則として本人の利益です。感情的な対立を避けるためにも、売却理由や資金使途を丁寧に共有しておくと誤解が生まれにくくなります。
居住用かどうかの判断を急いでしまう
施設入所中だから直ちに非居住用と決めつけるのは注意が必要です。生活実態や将来の居住可能性などにより、扱いが変わることがあります。迷う場合は、家庭裁判所や専門家に事前確認するのが一般的です。
住宅ローン残債がある場合の売却
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、抵当権抹消のために金融機関との調整が必要になることがあります。売却価格よりローン残高が多い、いわゆるオーバーローンの場合は、金融機関の承諾を前提とした任意売却が検討されることもあります。
住宅ローンと任意売却の注意点
住宅ローンの契約内容や金融機関の判断によって進め方は異なります。契約違反や承諾条件の見落としを避けるためにも、銀行、司法書士、弁護士、不動産会社へ早めに確認することが大切です。
不動産会社選びで進行が変わる
成年後見が関係する売却では、裁判所提出資料への理解、価格説明資料の準備、スケジュール調整など、通常の仲介より丁寧な実務対応が必要です。相続や後見案件の経験がある不動産会社へ相談することで、流れを整理しやすくなることがあります。
よくある質問
成年後見人は親の家を売却できますか?
できますが、本人の利益になることが前提で、居住用不動産にあたる場合は一般的に家庭裁判所の許可が必要です。
家庭裁判所の許可はいつ必要ですか?
居住用不動産を売却する場合は、一般的に売買契約を締結する前に家庭裁判所の許可を得る必要があります。
施設に入っている親の自宅も居住用不動産になりますか?
なる場合があります。住民票だけで決まるわけではなく、生活実態や将来戻る可能性などを踏まえて判断されることがあります。
売却までどれくらいかかりますか?
成年後見開始の申立て、許可申立て、売却活動、決済まで含めると、数か月から半年超かかるケースがあります。
売却益が出た場合、確定申告は誰が行いますか?
納税義務者は本人ですが、実務上は後見人が本人に代わって申告手続きを進めることがあります。
住宅ローンが残っている家でも売却できますか?
売却できる場合はありますが、金融機関との調整が必要で、オーバーローンでは任意売却など個別対応になることがあります。
成年後見と不動産売却のご相談
成年後見が関係する売却では、通常の売却よりも「誰が契約できるのか」「家庭裁判所の許可が必要か」「売却代金をどう管理するか」といった確認事項が増えます。
センチュリー21 クレール不動産では、台東区・荒川区を中心に、相続や成年後見が関係する不動産売却のご相談を承っています。ご事情を整理しながら、売却の進め方を一緒に確認したい方は、無料査定・相談フォームをご活用ください。
- 親の施設入所に向けて自宅売却を検討している方
- 後見人として売却の進め方を整理したい方
- 相続と成年後見が重なり、何から着手すべきか迷っている方
コラム作成日:2026年4月26日 / 最終更新日:2026年4月27日
※本コラムは作成時点の法令・情報に基づく一般的な解説です。制度運用、書式、税務上の取扱い、金融機関の判断などは変更される場合があります。
※個別の案件では、家庭裁判所、法務局、税務署、金融機関、弁護士、司法書士、税理士などへ確認のうえ、最終判断を行ってください。



















