不動産相続の生前対策|遺言・家族信託・贈与・売却の選び方【相続不動産の売却ならセンチュリー21クレール不動産】
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不動産相続の生前対策|遺言・家族信託・贈与・売却の選び方
更新日:2026-10-12 公開日:2026-10-12
結論|不動産相続の生前対策は「分け方・管理・資金」を整理してから選ぶ
不動産の相続に備える生前対策は、誰に引き継ぐか(分け方)・判断能力が下がったとき誰が管理するか(管理)・納税や住み替えに使える現金(資金)を先に整理し、そのうえで遺言・家族信託・生前贈与・生前売却を使い分けます。贈与や売却が有利とは限らず、名義を変えずにできる準備もあります。
- 引き継ぎ先を決めたい:遺言
- 判断能力の低下に備えて管理を任せたい:家族信託・任意後見
- 生前に財産を移したい:生前贈与(税金と特例への影響を比較)
- 現金化して住み替え・生活資金にしたい:生前売却
最初に、登記名義、家族の利用希望、税務上の評価と売却した場合の手取りを確認してください。
この記事は、自宅・実家・賃貸物件・土地の相続に備えたい所有者と、その家族に向けた生前対策のガイドです。「何から始めるか」「誰に残すか」「認知症にどう備えるか」「生前に売った方がよいか」を、本人の住まいと生活資金を含めて整理します。親の不動産について準備する場合も、所有者本人の意思を中心に進めます。
不動産の引継ぎ・管理・資金について、生前から家族で確認します。画像はイメージです。 不動産相続の生前対策は、4つの課題から考える
不動産の生前対策では、分け方、本人の住まい、管理する人、必要な資金を先に整理します。相続税がかからない見込みでも、実家を誰が取得し、誰が管理するかを準備する意味があります。
分け方:家を引き継ぐ人と、他の家族への配分
実家を一人に残したい場合は、預金などを他の家族へ配分できるか、住み続ける人が維持費を負担できるかを確認します。「兄弟で半分ずつ」と持分だけを決めても、使用・修繕・売却の方針が決まるわけではありません。
共有不動産の全体を任意に売却するには、通常、共有者全員の同意が必要です。共有にする場合は、利用者、税金や修繕費の負担、売却を検討する時期も話し合います。相続後の具体的な分け方は、換価分割・代償分割・共有分割の比較で確認できます。
住まい:配偶者と本人の生活をどう守るか
税負担の比較だけで自宅を贈与・売却すると、本人や配偶者の住まい、住み替え費用が課題になることがあります。誰がいつまで住むか、施設入居や転居の可能性、修繕費を含む毎月の支出を整理してください。
配偶者に住み続けてもらいたいときは、所有権を残す方法に加え、相続時に配偶者居住権を設定する選択肢もあります。利用できる条件と将来の売却への影響を、弁護士・司法書士などへ確認します。
管理:判断能力が低下したとき、誰が手続きを担うか
修繕・賃貸・売却が必要になった時点で、所有者が契約内容を理解して判断できるとは限りません。家族であることだけで代理権が生じるわけではないため、管理を頼む相手と、必要な契約・制度を早めに検討します。具体的な手段は、家族信託・任意後見・法定後見の違いで比較します。
資金:納税と生活費を、不動産の評価額と分ける
土地や家の評価額が高くても、納税・生活・修繕に使える現金が十分とは限りません。預金、保険契約、借入残高、年間の維持費を確認し、本人の生活資金と将来の相続に備える資金を分けて見積もります。
被相続人が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取る場合、「500万円×法定相続人の数」までの非課税枠があり、納税資金の備えとして検討されます。受取人や契約内容で扱いが変わるため、国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」を基に、保険会社と税理士へ確認してください。
相続税の申告・納税期限は、原則として亡くなった方の死亡を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内です。売却に時間がかかる可能性も踏まえ、期限までの資金繰りを税理士へ相談してください。
最初に確認するのは、登記名義・資料・5種類の価格
生前対策を選ぶ前に、本人が何を所有しているか、どのような権利や借入があるかを把握します。税金の計算に使う評価と、実際に売却できそうな価格は、別の資料で確認します。
登記名義と不動産の状況を確かめる
土地と建物の登記事項証明書で、所有者・持分・抵当権等を確認します。祖父母など以前の所有者名義のままなら、現在の権利関係と未了の相続手続きを整理する必要があります。固定資産税を払っている人と、登記上の所有者が一致するとは限りません。
- 戸建て・土地:接道、私道持分、境界、越境、未登記の増築、建物の状態
- マンション:管理費・修繕積立金、滞納、大規模修繕の予定、管理規約
- 賃貸物件:賃貸借契約、家賃、敷金、管理委託契約、修繕履歴
- 借地権:土地賃貸借契約、地代、更新、名義変更や譲渡に関する条件
- 借入がある物件:残高、契約上の条件、担保、名義変更や信託等についての金融機関への確認
これらは売却や引継ぎの調査項目です。資料が不足していても、取得先と確認する担当を決めるところから始められます。
登記の確認は、生前から必要です。2026年4月1日から、所有権の登記名義人の住所・氏名等の変更登記が義務化され、原則として変更日から2年以内に申請する必要があります。施行前の未登記の変更は原則2028年3月31日までです。法務省の住所等変更登記Q&Aで、スマート変更登記を含めて確認してください。
過去の相続登記が未了の場合は、別の期限が適用されます。2024年4月1日より前に相続による取得を知っていた不動産は、原則2027年3月31日までです。相続登記の義務化と期限・必要書類を参照してください。
税務上の評価・査定価格・売出価格を混同しない
生前対策で区別する5種類の価格 価格の種類 確認する目的 相続税評価額 相続税・贈与税の検討に使う評価。土地は路線価方式・倍率方式、家屋は原則として固定資産税評価額を基に、利用状況等も踏まえて確認します。 固定資産税評価額 固定資産税や登録免許税などの計算に関係する評価。土地では、相続税評価額や売却時の価格とは異なります。 査定価格 立地・状態・権利関係・取引事例等から見込む売却価格。不動産会社に根拠と前提条件を確認します。 売出価格 販売開始時に設定する価格。売却希望と市場の動きを踏まえて決めます。 成約価格 買主と合意して実際に契約する価格。査定価格や売出価格と一致するとは限りません。 なお、2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した一定の分譲マンションは、土地・建物の評価に区分所有補正率を反映します。固定資産税評価額だけで判断せず、対象と適用除外を、国税庁「居住用の区分所有財産の評価」に沿って税理士へ確認してください。
家族への配分を考える際も、「相続税の計算に使う金額」と「売却して受け取れる金額」を分けます。売却時の手取りは、成約価格から借入返済・諸費用・税金などを控除して見積もります。
遺言・家族信託・生前贈与・生前売却は、目的で選ぶ
遺言は相続後の引継ぎ、家族信託は契約で定めた財産管理、生前贈与は生前の財産移転、生前売却は現金化を主な目的として比較します。必要に応じて組み合わせますが、同じ不動産について契約や遺言の内容が食い違わないように確認します。
4つの方法と、最初に確認すること 方法 主な目的 最初の確認 遺言 相続後の引継ぎ先を定める 財産の特定、遺留分、実行する人 家族信託 信託した財産の管理・処分に備える 任せる人、権限、費用、終了時の扱い 生前贈与 生前に財産を移す 税負担、特例への影響、本人の住まい 生前売却 不動産を現金化する 売却後の手取り、住み替え先、生活資金 遺言:誰に何を残すかを、実行できる内容にする
自宅を特定の家族に残したい、相続人以外の人へ財産を渡したい場合などに、遺言を検討します。不動産を特定できる情報、他の財産の配分、必要に応じた遺言執行者の指定を、公証人や法律の専門家へ相談してください。
公正証書遺言は公証人が作成し、家庭裁判所の検認は不要です。作成手続き・資料・費用は、日本公証人連合会の遺言の案内で確認できます。
自筆証書遺言は形式を満たす必要があります。法務局の保管制度を利用した場合は検認が不要ですが、保管制度が遺言の内容の有効性を保証するわけではありません。詳細は法務省の自筆証書遺言書保管制度の案内を参照してください。エンディングノートは希望や資料の所在を伝える補助に使えますが、それだけで有効な遺言になるとは限りません。
また、一定の相続人には、遺言等で財産を配分しても保障される最低限の取り分である「遺留分」があります。遺留分を侵害すると金銭の請求を受ける可能性があり、相続人への生前贈与は、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けたものが相続開始前10年以内であれば、計算に含まれることがあります。家を引き継ぐ人が支払えるかも含めて弁護士へ確認してください。法務省の遺留分制度の資料(PDF)も参考になります。
家族信託:管理を任せる仕組み
家族信託と呼ばれる仕組みは、一般に、財産を持つ人(委託者)が家族等の受託者へ財産を託し、定めた目的に沿って管理・処分してもらう民事信託を指します。利益を受ける人を受益者といいます。認知症に備えた使い方と注意点は、次の章で任意後見・法定後見と比べます。
生前贈与:所有権を移す前に、税金と生活への影響を比べる
生前贈与は、所有者の意思に基づいて不動産などを生前に渡す方法です。引継ぎ先を具体化できる一方、贈与税・登記・不動産取得税などの確認が必要で、本人が住み続ける条件や生活資金も整理します。税金と特例の比較は、生前贈与と相続の税金・費用・特例で説明します。
生前売却:現金化と、本人の住まい・資金を一緒に考える
使わなくなった家や管理が難しい土地を生前に売却し、住み替えや生活の資金を確保する方法です。現金にすると将来の配分を考えやすくなりますが、譲渡所得税・売却費用・転居費用を含めた手取りで比較します。売却代金が本人の預金として残れば、その預金は将来の相続財産になります。売却後に子へ代金を渡す行為は、売却とは別に贈与の税務確認が必要です。
認知症に備える家族信託・任意後見・法定後見の違い
判断能力が十分なうちは、家族信託や任意後見の契約を結べます。判断能力が低下した後は、契約の有効性が問題になり、新たに結べないことがあります。その場合は家庭裁判所が関わる法定後見が中心になるため、どの段階にいるかで使える手段が変わります。
認知症への備え:3つの制度の違い 制度 始める時期 管理・売却の権限 裁判所等の関与 家族信託 判断能力があるうちに、委託者と受託者が契約します。 信託契約で定めた範囲。信託した不動産を受託者が管理・処分します。 契約で定めます。監督者を置くかどうかも設計次第です。 任意後見 判断能力があるうちに公正証書で契約し、低下後に家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶと効力が生じます。 契約の代理権目録に定めた範囲。売却を任せるなら、その旨の定めが必要です。 任意後見監督人が監督します。 法定後見 判断能力が低下した後に、家庭裁判所へ申し立てます。 家庭裁判所が選ぶ後見人等が担います。居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要です。 家庭裁判所が監督します。専門職が選ばれることもあります。 家族信託で実家の管理を任せるときの確認点
認知症などに備えた親族間の信託の活用について、法務省は信託制度のパンフレットを公表しています。ただし、信託を作ればあらゆる手続きに対応できるわけではなく、対象財産と権限は信託の内容に左右されます。
- 修繕・賃貸・売却を任せる範囲と、本人のために使う資金
- 信託する不動産の登記、金融機関の取扱い、借入契約との関係
- 受託者の記録・報告・財産管理の負担と、続けられなくなった場合の対応
- 本人が亡くなったときの扱い、信託の終了、残る財産の帰属
- 設計・契約・登記・継続管理の費用と税務
節税を前提に選ぶ制度ではありません。遺言との整合や税務、遺留分に関係する点を、信託を扱う弁護士・司法書士と税理士へ確認してください。
任意後見:判断能力があるうちに、公正証書で備える
任意後見は、本人に十分な判断能力があるうちに公正証書で契約し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると効力が生じる制度です。契約で定めた代理権の範囲で動くため、不動産の売却を任せたい場合は、その権限を契約に入れておく必要があります。法務省の任意後見制度Q&Aで確認してください。
判断能力が低下した後に、実家を売るには
子どもであることだけでは、親の不動産を売る代理権はありません。ただし、認知症という診断名だけで一律に契約できなくなると決めつけず、行為に必要な判断能力と代理権を個別に確認します。本人の判断能力が不十分な場合の制度は、法務省の成年後見制度Q&Aを参照してください。
既に判断能力が低下している場合は、新たな契約を急がず、法定後見などの支援を専門家へ相談します。成年後見人等が本人の居住用不動産を処分する場合には、家庭裁判所の事前の許可が必要です。制度と実務は、裁判所の居住用不動産処分の案内と、成年後見人による不動産売却の流れを参照してください。
生前贈与と相続は、税金・登記費用・特例をまとめて比較する
不動産の生前贈与が有利かどうかは、贈与税だけでは判断できません。相続税の見込み、登記等の費用、将来利用できる特例、本人の生活への影響を同じ条件で試算します。
相続税の基礎控除を、不動産以外の財産も含めて確認する
相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。たとえば法定相続人が3人なら4,800万円ですが、不動産だけでなく預金などを含め、債務や贈与財産の加算等も考慮して判定します。
特例の適用によって税額がゼロになる場合でも、申告が必要なことがあります。法定相続人の数え方や申告の要否は、国税庁「相続税がかかる場合」を基に、税理士へ確認してください。
暦年贈与の110万円と、相続税への加算は別の話
暦年課税の基礎控除は、受け取る人について、1年間に受けた贈与の合計で110万円です。複数の人から贈与を受ける場合も合計します。国税庁「贈与税がかかる場合」で確認できます。
一方、亡くなった方から相続・遺贈等で財産を取得した人が、対象期間内に暦年贈与も受けていた場合、その贈与財産は原則として相続税の課税価格に加算されます。贈与時に110万円以下で贈与税がかからなかった財産も、対象になり得ます。
暦年贈与の加算対象期間の経過措置 相続開始日 加算対象期間 2026年12月31日まで 相続開始前3年以内 2027年1月1日~2030年12月31日 2024年1月1日から相続開始日まで 2031年1月1日以後 相続開始前7年以内 2027年1月2日以後に相続が開始する場合、延長された期間のうち相続開始前3年以内の分を除く贈与には、合計100万円の加算除外があります。年ごとの控除ではありません。対象者や加算しない財産等は、国税庁「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」で確認してください。
相続時精算課税で不動産を贈与するときの注意点
- 2,500万円は、贈与税の特別控除です。相続税の非課税枠ではなく、不動産の相続税がなくなる制度でもありません。
- 贈与者が亡くなったときは、原則として贈与時の価額を相続税の計算に加えます。2024年1月1日以後の贈与では、贈与を受けた年分ごとに、その贈与時の価額の合計額から相続時精算課税の年110万円の基礎控除を差し引いた額を加算します。2023年12月31日以前の贈与には、この基礎控除はありません。贈与後に価値が下がっても、原則として贈与時の価額で計算します。
- 一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税へ戻せません。
- 贈与した土地は、小規模宅地等の特例の対象外です。
- 登録免許税・不動産取得税は別にかかります。
選択できるのは、原則として贈与した年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母等から、同日に18歳以上の直系卑属である推定相続人または孫への贈与です。例外もあるため、年齢・続柄・対象財産を確認します。
2024年1月1日以後の贈与では年110万円の基礎控除があり、その控除後の財産について、同じ贈与者ごとに累計2,500万円までの特別控除を利用できます。基礎控除と特別控除を差し引いた残額の贈与税率は20%です。複数の特定贈与者から受ける場合の年110万円は、贈与者ごとに別枠となるのではなく、按分します。
原則として贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに選択届出を行い、特別控除には期限内の贈与税申告が必要です。期限が休日に当たる場合等は、当該年の案内を確認します。詳しくは国税庁「相続時精算課税の選択」を確認してください。
夫婦間で自宅を贈与する:贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年を過ぎた夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与し、贈与税の申告をすると、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円を控除できます。要件は主に次の3つです。
- 婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
- 贈与された財産が、居住用不動産、またはその取得のための金銭であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた人が現実に住み、その後も引き続き住む見込みであること
同じ配偶者からの贈与について適用できるのは一度だけです。贈与税の配偶者控除を適用した金額(最高2,000万円)は、相続税の課税価格への加算対象になりません。ただし、年110万円の基礎控除に相当する部分まで一律に加算対象外になるわけではなく、暦年贈与の加算要件に該当すれば対象になります。一方、名義を移すと登録免許税や不動産取得税がかかり、贈与した土地は小規模宅地等の特例の対象外です。居住用の範囲や申告の手続きは、国税庁「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」で確認してください。
生前に土地を贈与すると、小規模宅地等の特例が使えない
小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たす宅地等について相続税の課税価格を減額する制度です。特定居住用宅地等に該当すれば、330㎡まで80%の減額があり得ますが、取得する人や居住・保有等の要件、申告が必要です。
生前贈与で取得した土地は、原則としてこの特例の対象ではありません。相続時精算課税で贈与した土地を相続税の計算に加える場合も同様です。土地を移す前に、国税庁の小規模宅地等の特例と、贈与財産の取扱いに関する通達を基に比較してください。
登録免許税・不動産取得税・専門家費用も加える
土地・建物の所有権移転登記の登録免許税は、原則として相続が0.4%、贈与が2%です。課税標準は通常、固定資産課税台帳の価格で、適用できる免税措置等は別に確認します。根拠は国税庁の登録免許税の税額表です。
また、生前贈与では不動産取得税も確認が必要です。相続時精算課税を利用しても、不動産取得税が自動的に免除されるわけではありません。東京都主税局の不動産取得税Q&Aなど、不動産所在地の都道府県の案内で軽減要件を確認します。
遺言・信託・贈与の費用は、財産の内容と依頼範囲で変わります。税金、公証人の手数料、登記、専門家の報酬、継続管理の費用を分け、見積書で比較してください。
実家を生前に売るか、残すかは「利用」と「手取り」で判断する
生前売却は、今後使う予定が乏しい場合や、本人の住み替え・管理負担の整理が必要な場合に候補となります。住み続ける希望や賃貸収支、税務への影響もあるため、相続後の売却より有利と一律にはいえません。
生前に売る・貸す・持ち続けるの比較
実家の扱いごとの向く場面と注意点 選択肢 向く場面 主なメリット 主な注意点 生前に売る 使っていない、転居を希望している、遠方で管理が難しい 現金化で住み替えや生活資金を確保でき、将来の配分も考えやすい 譲渡所得税・諸費用・住み替え費用を引いた手取りで比較する 貸す 貸せる状態で、収支が成り立つ 所有を続けながら家賃収入を得られる 改修費・空室・管理費、契約と修繕を担う人、将来の売却条件への影響 持ち続ける 本人や配偶者が住み続けたい、利用予定が具体的 住まいを維持し、選択肢を残せる 修繕費・固定資産税などの維持費、管理の負担、将来の共有化や空き家化 賃貸を始めると、将来の売却条件や税務上の取扱いが変わる場合があります。先に保有・賃貸・売却の前提をそろえ、本人の希望と照らし合わせてください。
試算例:売却価格と手取りを分ける
売却価格3,500万円、借入返済800万円、売却諸費用200万円と仮定すると、譲渡所得税等を差し引く前の残額は2,500万円です。ここから税金、住み替え費用、必要な生活資金を考えます。価格・費用は説明用の仮定であり、個別の査定結果ではありません。
生前売却の税制と、相続後の空き家特例を区別する
本人がマイホームを売却する場合は、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できる居住用財産の特例があります。親子・夫婦など特別な関係がある相手への売却等は対象外で、確定申告も必要です。国税庁「マイホームを売ったときの特例」で、居住状況・売却時期・他の特例との関係を確認してください。
相続後の家屋・敷地を売る場合の空き家特例とは、対象者や要件が異なります。生前から「相続後に使えるはず」と決めつけず、相続空き家の3,000万円特別控除の要件・期限を別に確認します。相続後の保有・賃貸・売却は、相続した家・空き家の売却ガイドで整理できます。
取得費が分かる資料を、今のうちに残す
購入時の売買契約書、購入代金や仲介手数料の領収書、建築・改修の資料をまとめておきます。将来の売却で取得費を確認する際の資料になるため、古いからと処分せず、保管場所を家族と共有してください。購入資料が見当たらない場合の確認順序は、相続した不動産の取得費がわからないときの資料の探し方で説明しています。
相談事例|現金・預金がほとんどなく、財産の大半が不動産
高齢の不動産所有者から、現金・預金がほとんどなく、財産の大半が不動産という相談がありました。不動産を持っていても、その価値を生活費や修繕費としてすぐに使えるわけではありません。相続を考える際も、財産の評価と、必要なときに使える現金を分けて確認する必要があります。
この相談の背景をもとに、同じような状況で確認するポイントと判断の流れを整理します。中心になるのは、本人の生活を守る資金、不動産の管理、将来の納税と家族への配分です。
財産が不動産に偏っていると、どのような課題が生じるか
不動産の評価額が高くても、現金・預金が少なければ、医療・介護、建物の修繕などの支出が重なったときに資金が不足する可能性があります。相続税がかからない見込みでも、本人の生活費や維持費をどう賄うかは別に考える必要があります。
相続人が複数いる場合は、分け方も課題になります。一人が不動産を引き継ぎ、他の人へ現金等を配分したいと思っても、その資金がなければ希望どおりに分けられるとは限りません。共有で引き継ぐ方法にも、将来の利用・修繕・売却について調整が必要になる点があります。
このようなケースでは、節税の方法を選ぶ前に、誰が、何のために、いつ現金を必要とするかを具体的にすることが重要です。
最初に、本人の住まいと生活資金を整理する
まず確認するのは、本人が今後も住み続けたいか、住み替えや施設入居を考えているか、その希望を実現するために必要な費用です。家族への引継ぎを優先するあまり、本人の住まいや使える資金が不足しないよう、本人の意思を起点に整理します。
年金・賃料などの継続収入があるか、毎月の生活費や借入返済を賄えるかを確認し、固定資産税、修繕、医療・介護などの支出も加えて見通しを立てます。定期的な収支と、一度にまとまったお金が必要になる支出は分けて記録します。
現金・預金が少ないケースで整理する資金 資金の用途 確認する内容 毎日の生活 継続収入と生活費・医療費・借入返済等を比べ、毎月または年間の収支を確認する。 今後のまとまった支出 修繕、介護、住み替え等の予定と、支出時期までに確保できる現金を確認する。 相続税の納税 課税される見込みがある場合に、税額・期限・納税資金の準備方法を確認する。 家族への配分 不動産を引き継ぐ人と他の家族への配分を考え、現金による調整が必要か確認する。 将来の納税に備えるお金を検討する場合も、本人が生活や介護に使う資金と区別します。必要額がまだ分からない項目は、見積りや専門家への確認が必要な事項として残しておきます。
相続税の見込みと、不動産の分け方を確認する
「不動産が多いから相続税が高い」とは一律に判断できません。土地・建物の税務上の評価、不動産以外の財産、債務、贈与の履歴、法定相続人、利用できる特例などをそろえて税理士に試算を依頼します。売却査定の金額を、そのまま相続税の評価額として使うことはできません。
相続税の申告・納税が必要な場合は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内の期限に向け、使える現金を確認します。相続後の売却を納税資金の準備方法として考える場合も、遺産分割、相続登記、物件調査、買主探し等に要する期間を見込み、期限までの準備を税理士と不動産会社へ相談します。国税庁「相続税の申告と納税」も参照してください。
分け方については、誰が住む・使う・管理するかを確認します。特定の家族が不動産を引き継ぐ場合は、他の財産の配分や代償金を準備できるかも検討します。家族の希望がそろわない場合は、無理に方法を決めず、遺言・遺留分・将来の協議について法律の専門家へ相談します。
生前に売る・貸す・持ち続けるを、本人の生活と合わせて比較する
現金・預金が少ない状況でも、すぐに不動産を売ると決めるのではなく、使い方と収支を確認します。比較するときは、不動産会社の査定と税理士の試算で前提をそろえ、次のように判断材料を整理します。
- 持ち続ける場合:本人が住み続ける希望や利用予定があり、継続収入等で維持費を賄えるかを確認します。修繕費の備え、管理を担う人、判断能力が低下した場合の手続きも検討します。
- 貸す場合:貸せる状態か、改修費を先に用意できるかを確認します。家賃収入だけで判断せず、空室、管理費、修繕費、税金等を含めた収支と、本人の住まいを別に確保する必要があるかを比較します。
- 生前に売る場合:見込める成約価格から借入返済・諸費用・税金等を引き、本人が使える手取りを試算します。住み替えや施設入居を伴うなら、その費用を差し引いた後も必要な生活資金が残るかを確認します。
複数の不動産を所有している場合や、土地の一部を切り分けて売却できる可能性がある場合は、全部を売る方法と一部を売る方法も比較できます。ただし、分筆・接道・境界・担保等の確認が必要で、部分売却ができるとは限りません。所有する不動産の内容に応じて検討します。
生前売却で現金化しても、売却代金が本人の預金として残れば、その預金は将来の相続財産になります。税金の軽減だけを目的にせず、本人の生活資金、管理負担、家族への配分がどう変わるかを確認することが大切です。
相談を具体的な方針につなげるために、資料と担当をそろえる
相談時には、土地・建物の登記事項証明書、固定資産税の課税明細、購入時の契約書、借入残高、年間の維持費、継続収入と支出の概要を集めます。賃貸中であれば賃貸借契約や管理・修繕の資料も確認します。最初から全てをそろえる必要はありませんが、資料の所在と不足している項目を明確にします。
そのうえで、不動産会社は物件調査・査定・売却や賃貸の見通しを、税理士は税務上の評価・税額・特例を確認します。遺言、信託、登記、家族間の調整が必要な場合は、弁護士・司法書士・公証人等へつなげて検討します。
この相談から考える生前対策の順序
本人の希望と生活資金を確認し、不動産の利用・管理・価格を把握する。続いて相続税と家族への配分を試算し、保有・賃貸・売却や引継ぎの方法を比較する、という順序で整理します。
財産の大半が不動産というケースでは、節税と同時に、必要なときに使えるお金を確保できるかが課題になります。本人の生活を守ることと、財産を引き継ぐ準備を一緒に進めることが、具体的な方針を決めるための出発点です。
不動産の生前対策を形にする5ステップ
生前対策は、資料を集め、本人の希望と資金を確認したうえで、必要な専門家に制度・税務・契約を確かめてもらい実行します。名義変更等を先に行わず、比較の前提をそろえる順序が基本です。
- 財産と権利関係を一覧にする。不動産の所在地・登記名義・持分、預金・借入・保険、契約書と資料の所在を記録します。
- 本人の希望と家族の利用予定を確認する。住み続ける期間、引継ぎ希望、管理を頼める人を整理します。家族の話合いだけで、法的に有効な遺言や契約が完成するわけではありません。
- 価格と資金を試算する。税務上の評価、売却した場合の手取り、納税・生活・修繕の資金を別々に計算します。
- 方法を選び、書類・費用・権限を確認する。遺言、信託、贈与、売却の必要範囲を決め、専門家や金融機関に確認して実行します。
- 変更時に見直す。転居、家族構成、借入、財産、利用予定、制度が変わったら、遺言や契約、管理担当、資料の所在を見直します。
相談前に集める資料
- 土地・建物の登記事項証明書、固定資産税納税通知書・課税明細書
- 購入時の売買契約書・領収書、図面・測量図、建築や修繕の資料
- 住宅ローン等の残高・契約資料、賃貸借契約、借地契約
- 預金・保険・その他の財産と債務の概要
- 家族関係、既存の遺言・信託・贈与の有無、本人と家族の希望
最初から全ての書類をそろえる必要はありません。公正証書遺言では戸籍、本人確認資料、不動産の登記事項証明書等が求められますが、必要資料は内容によって異なります。日本公証人連合会の作成資料の案内と、相談先の指示で確認してください。
不動産相続の生前対策でよくある質問
相続税がかからない見込みでも、生前対策は必要ですか?
分け方や管理を準備する意味があります。不動産を誰が取得するか、住む人がいるか、維持費を誰が負担するかは、相続税の有無とは別の課題です。まず本人の希望と家族の利用予定、登記名義、資料の所在を整理してください。
生前に子へ不動産の名義を変えた方がよいですか?
一律にはいえません。贈与による名義変更なら贈与税・登録免許税・不動産取得税を確認し、小規模宅地等の特例への影響や本人の住まいも比較します。名義を変えずに、遺言や管理の仕組みを準備する方法もあります。
不動産は、生前贈与と相続のどちらが得ですか?
一律にはいえません。贈与は登録免許税(原則2%)や不動産取得税がかかり、贈与した土地は小規模宅地等の特例の対象外です。相続税がかかる見込みの有無、本人の住まい、将来の売却予定も含め、同じ条件で試算して比較します。
遺言と家族信託は、どちらを選べばよいですか?
相続後の引継ぎ先を定めたいなら遺言、信託した財産の管理・処分を任せたいなら家族信託を検討します。目的が異なるため、両方が必要な場合もあります。対象財産、権限、終了時の扱い、税務と費用を専門家に確認してください。
毎年110万円以下なら、相続税もかかりませんか?
贈与税と相続税は別です。暦年課税で年110万円以下でも、亡くなった方から相続・遺贈等で財産を取得し、加算対象期間内の贈与に該当すると、原則として相続税の課税価格に加算されます。相続時精算課税の年110万円とは取扱いが異なります。
相続時精算課税なら、2,500万円まで税金がかからないのですか?
2,500万円は贈与税の特別控除で、相続税の非課税枠ではありません。贈与者が亡くなったときは、原則として贈与時の価額を相続税の計算に加えます。ただし、2024年1月1日以後の贈与では、贈与を受けた年分ごとの価額の合計額から相続時精算課税の年110万円の基礎控除を差し引いた額を加算します。2023年12月31日以前の贈与には、この基礎控除はありません。選択後は同じ贈与者について暦年課税へ戻せない点も確認してください。
夫婦間で自宅を贈与すると、贈与税はかかりませんか?
婚姻期間が20年を過ぎた夫婦間で居住用不動産(または取得資金)を贈与し、要件を満たして贈与税の申告をすれば、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円を控除できます。この配偶者控除を使う場合は、控除内に収まっても申告が必要です。相続税への加算対象外となるのは配偶者控除を適用した金額(最高2,000万円)で、年110万円の基礎控除部分まで一律に対象外になるわけではありません。登録免許税・不動産取得税や、小規模宅地等の特例への影響は別に確認してください。
親が認知症になったら、子どもが実家を売れますか?
子どもであることだけでは、親の不動産を売る代理権はありません。本人の判断能力と、信託や後見等による権限を個別に確認します。成年後見人等が本人の居住用不動産を処分する場合は、家庭裁判所の事前の許可が必要です。
家族で合意しておけば、遺言は作らなくてもよいですか?
話合いの記録は準備に役立ちますが、将来の相続時の手続きをそのまま確定するとは限りません。希望を法的に実現するための遺言や契約が必要か、家族構成や財産の内容に応じて専門家へ確認してください。
相談先を分け、相談前メモに希望と未確認を残す
生前対策は、財産の調査・価格・売却方針と、法律・登記・税務を分けて相談します。まだ方法が決まっていない場合は、本人の希望と未確認の事項を一枚にまとめると、必要な相談先を整理できます。
- 不動産会社:物件調査、査定、保有・賃貸・売却の比較、販売条件や売却費用。
- 司法書士・法務局:登記名義、相続・贈与・信託等の登記、登記に必要な資料。
- 税理士・税務署:相続税・贈与税・譲渡所得税、評価、特例の要件と申告。
- 弁護士:遺留分、家族間の紛争、遺言・契約の有効性や法的な設計。
- 公証人:公正証書遺言、任意後見等の公正証書の作成。
- 土地家屋調査士・不動産鑑定士:境界・表題登記、専門的な価格鑑定が必要な場合。
相談前メモの項目
- 不動産の所在地・種類・登記名義・持分
- 本人と配偶者の住まいの希望、家族の利用予定
- 管理を頼める人、引き継いでもらいたい人
- 借入残高、維持費、預金など使える資金
- 遺言・信託・贈与の有無、手元にある資料
- 税金、登記、売却について確認したいこと
本人の希望が未確認、家族の意見が分かれる、税務の試算がまだない、といった事項もそのまま記録します。
相続前の不動産整理から、ご相談いただけます
センチュリー21クレール不動産では、全国の相続不動産相談・査定に対応しています。売却を決める前の段階でも、物件の状況、家族の利用予定、価格や費用を整理し、売る・残す・貸す選択肢を検討できます。
遺言・登記・税務等の判断が先に必要な場合は、それぞれの専門家への確認事項を整理します。査定価格は、成約価格や売却後の手取りを保証するものではありません。
営業時間:10:00~19:00/水曜定休
所在地:〒110-0003 東京都台東区根岸5-17-4
メール:clair@c21-clair.jp出典・注記
制度の説明は、本文中でリンクした国税庁、法務省、裁判所、東京都主税局、日本公証人連合会の一次情報を参照しています。国税庁のタックスアンサーは、各ページに表示される法令等の基準日と、その後の改正の有無を確認してください。贈与財産の加算期間は、相続開始日の経過措置を区別しています。
相続税評価額の考え方は、国税庁の土地家屋の評価、配偶者居住権は法務省の配偶者の居住権保護に関する案内も参照してください。
この記事は一般的な制度と確認事項の解説であり、個別の法律・税務判断を示すものではありません。実行時にはその時点の制度と本人・家族・不動産の状況を確認し、登記は司法書士・法務局、税務は税理士・税務署、紛争や遺言・契約の有効性は弁護士等へ相談してください。





